乳酸菌は糖を発酵し、乳酸を生成するグラム陽性の桿菌および球菌の総称である。一般的な性質として胞子を形成せず非運動性などの特徴を有しているが、近年動物の消化管やココア、焼酎など食品の製造過程から鞭毛による運動性を有する乳酸菌群が分離されている。しかし、このような運動性乳酸菌の既知種は少なく、環境中における分布や機能性が不明であり、これらの研究開発や産業利用はほとんど行われていない。この一因として運動性乳酸菌の効率的な分離法が確立されていないことが挙げられる。一部の運動性乳酸菌においては、人の免疫系の賦活化に関わっている可能性があることも報告されており、今後さらに注目が高まる菌群であると考えられる。
そこで本研究では、運動性乳酸菌を環境中から選択的に分離する方法を確立し多数の分離株を得るとともに、運動性の発現について分子生物学的な手法を用いて、その特性を明らかにすることを目的にした。